結論
病院でも拘束ゼロは可能と言えば可能。しかし、スタッフが耐えれるかは保証できない。
身体拘束は原則禁止だが…
身体拘束は原則禁止。そんな事は知っている。しかし、病院は治療という目的を盾に、身体拘束の場面は多々ある。必要悪という認識だ。
入院時に他の書類と共に拘束同意書にもサインを貰っている為、開始するのも比較的安易であった。拘束と言っても柵やベッドに縛りつけたりする事は無い。しかし、点滴ルートやオムツを外さない様に介護服の着用や、車いすから立ち上がらない様にする拘束ベルトなどは日常であった。
しかし、施設ではそうはいかない。病院入院中なら「治療の為」という強力な理由があるが、生活の場である施設では「安全の為」では理由が弱い。誰の為の安全か?「利用者の安全」よりも「スタッフの負担軽減の為」の拘束と映る方が大きいだろう。時々「病院の時は簡単に拘束できたのにな」と思う事がある。

縛ったりなんかはほぼ無かったけど、介護服は結構安易に選択するよな。むしろ積極的に家族に買ってもらってた時期もあったし。売店で売ってるしな。

看護師によって考え方が違うからな。介護服を着せるか着せないかで、着せる派とよく衝突してたの思い出すわ。
当苑で拘束をするケースは1場面のみ
- 認知症で理解力低下があり制止できない。
- なおかつ徘徊行動がひどく、他の居室にも入ってしまう。
- 上記の2つの条件に当てはまるコロナやノロに感染している利用者。
単純に拘束しないとフロア中の利用者に暴露される為、施錠できる個室でお過ごしいただく。認知症療養棟の為、そういう事態を想定して1部屋だけ鍵がかかる部屋がある。面白いのは何故か中からも鍵が開けれるという事。災害時など想定すれば当たり前と言われればそうなんだが。鍵を理解されると普通に中から開けて出てくる事もある。難しいところだ。

出てきたらダメじゃん…。

マジでこれは難しいねんて。今を守るか、緊急時などの不測の事態を想定するか、こんなん結論が出るわけがない。「拘束は原則禁止だから」と言われたら終わりやしな。
身体拘束が認められる3つの要件(緊急やむを得ない場合)
身体拘束は原則禁止だが、利用者の生命や身体の保護のため、「緊急やむを得ない場合」に限り以下の3つの要件をすべて満たせば例外的に認められる。
- 切迫性:
- 利用者本人または他の利用者の生命や身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。
- 身体拘束をしないと、生命や身体に危険が及ぶと判断されること。
- 非代替性:
- 身体拘束以外に代替する介護・看護方法がないこと。
- あらゆる介護方法を検討し、複数のスタッフで議論を重ねた上で、身体拘束以外に手段がないと判断されること。
- 拘束方法は、本人の負担が軽く、最も制限の少ない方法が選択されること。
- 一時性:
- 身体拘束が一時的なものであること。
- 必要最小限の時間と期間に限定され、状態に応じて解除に向けて常に検討されること。
これらの要件を満たした場合でも、身体拘束を行う際は本人や家族への十分な説明と同意を得ることが重要。また、拘束中の観察と記録、定期的な解除の検討が義務付けられている。
身体拘束の具体例
身体拘束は、直接的に身体を縛る行為だけでなく、行動を制限する様々な行為も含まれまる。主な具体例としては…。
- ひもや抑制帯などで身体を縛る:
- 徘徊や転落を防ぐため、車椅子やベッドに体幹や手足をひもで縛る。
- 点滴や経管栄養チューブを抜かないように、手足をひもで縛る。
- 他者への迷惑行為を防ぐため、身体を縛る。
- 物理的な制限:
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。4点柵など。
- 手指の機能を制限するミトン型の手袋などをつけさせる(点滴やドレーンの自己抜去、皮膚を掻きむしるのを防ぐため)。
- 立ち上がりを妨げるような椅子の使用。
- 部屋も施錠などの隔離。
- その他の制限:
- 脱衣やおむつ外しを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- ブザーなどを利用して行動を制限する(徘徊防止など)。

今って介護士も不足してるやろ。だから介護さんも疲労困憊なわけよ。最近は認知症状の強い利用者に対して「何で看護師さんは睡眠薬を出さないんですか?」ってよく言われる。

気持ちは分かるけどな。でもそれって「誰の為?誰が得するん?」ってなるよな。薬で全部解決すると思ってるんかな?

全部解決するとは思ってないやろ。でも、それを言ってしまうぐらい疲れているんだろうな。介護職員の不足はマジで深刻。

身体拘束の最小化基準:診療報酬改定のポイント
「身体拘束の最小化基準」は、厚生労働省が策定した「身体拘束ゼロへの手引き」に基づき、医療機関や介護施設が身体拘束を原則として行わず、やむを得ない場合にのみ最小限の範囲で実施するための具体的な指針。
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定において、身体拘束の最小化に関する取り組みが大幅に強化。
患者の尊厳を守り、質の高い医療を提供することが目的。
2024年度診療報酬改定のポイント
主な変更点は以下の通り。
- 「身体拘束の最小化」が全病棟で義務化
- これまで特定の病棟や加算に限定されていた「身体拘束の最小化」に関する取り組みが、精神科病棟以外のすべての病棟の入院基本料の算定要件として義務付けられた。
- これにより、急性期から慢性期、救急病棟、ICU・HCUなども含め、全ての入院患者が対象となる。
- 身体拘束最小化のための基準の明確化と減算措置
- 入院基本料の通則に、以下の「身体拘束最小化の基準」が追加。
- 緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束を行ってはならないこと。
- 身体拘束を行う場合には、その態様、時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならないこと。
- 身体拘束最小化チームを設置し、以下の業務を実施すること。
- 身体拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知徹底すること。
- 身体拘束を最小化するための指針を作成し、職員に周知し活用すること。
- 入院患者に係る職員を対象として、身体拘束の最小化に関する研修を定期的に行うこと。
- これらの基準を満たせない場合、入院基本料が1日あたり40点減算。この減算は病院経営に大きな影響を与えるため、各病院は対応を迫られている。
- 入院基本料の通則に、以下の「身体拘束最小化の基準」が追加。
- 認知症ケア加算の身体拘束による減算の強化
- 認知症ケア加算においても、身体拘束を実施した日の加算点数が、これまでの「100分の60」から「100分の40」に減算。
- 病院全体で身体拘束の実施率が高いと、認知症ケア加算による収入が実質的に減少する可能性があり、より一層の身体拘束削減が求められる。
- 経過措置期間
- 2024年3月31日時点で既に入院基本料などを届け出ている病棟・病床については、2025年5月31日までの経過措置期間が設けられている。この期間内に、上記の基準を満たすための体制整備が求められる。
- 基準適応は2025年6月から。
改定の背景と影響
- 患者の尊厳の尊重と質の高い医療の提供: 身体拘束は患者の尊厳を侵害し、身体的・精神的な弊害をもたらすため、その最小化は医療の質向上に不可欠であるという考え方が背景。特に高齢化が進み、認知症患者が増加する中で、適切なケアの提供が課題となっている。
- 多職種連携の推進: 身体拘束の最小化には、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門職など、多職種が連携して患者の状態を総合的に評価し、個別性の高いケアを提供することが不可欠。改定は、この多職種連携を強く促すものとなっている。
- 病院経営への影響: 減算措置は、病院の収益に直接影響を与えるため、各病院は身体拘束の現状を見直し、最小化に向けた具体的な取り組みを加速させる必要がある。身体拘束ゼロを目指すための人員配置や環境整備、職員研修への投資が必要。
今回の診療報酬改定は、身体拘束を「最後の手段」として位置づけ、原則禁止とする「身体拘束ゼロ」の理念を、より一層医療現場に浸透させるための強力なメッセージと言える。
まとめ
現場のスタッフだけに負担を負わせず、会社(病院・施設)全体で考えなさい。現場にばっかり責任押しつけてるならと減算しちゃうわよって事。

病院にも「身体拘束委員会」があるけど、あれって実際活動してるん?

俺の知る限りでは活動している形跡は無かったな。これからじゃね?
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