今年も看護学生実習の季節がやってきた。病院で実習担当だったが、まさか老健でも実習担当をするとは。そういう運命か。去年の実習生はちゃんと国家試験受かったんだろうな。何人かは「受かりました」と連絡あったが…。連絡ない奴は大丈夫か?

老健の実習ってどんなん?病院よりは気楽やろ?

気楽やぞ。楽やけど難しいぞ。病院と違って本人にはっきりした目的がない場合が多いからな。入院してるって事は『治療する疾患』があるわけやろ。つまり、目的があるって事や。対して老健の利用目的は治療じゃないからな。変な話しやけど、真面目過ぎると身動きとれなくなるな。そして何も出来ずに終了や。
入院する患者には『疾患の治療』という目的がある。そもそも健康な人は入院しない。疾患がある以上、その疾患をベースに看護展開していけば良い。どこまで展開するか、ゴールをどこに設定するかは患者の属性によるが、取りあえずはスタート地点は決まっている。
対する老健など施設の利用者の目的は『治療』ではない。在宅復帰の為に純粋にリハビリ目的の利用者もいれば、認知症で独居生活が続けられない者、家族の介護負担が大きく介護が継続できないなど様々だ。当施設の利用者は認知症の方が多く、ほとんどが在宅で生活できない為の避難的なケースが多い。
老健で働く前は『老健は3か月しか利用できない』と思っていた。病院時代の退院調整のカンファレンスでも老健の職員は「3カ月の利用しかできない」と言っていたし、そもそも学校でそう習っていた。実際は特養など半永久的に過ごせる施設と変わらない。数年単位で利用されている方も多いし、退所しようにも帰る場所がない方は多い。介護度が上がれば特養など勧める事も出来るが、一応はリハビリ施設の為、そんなすぐに介護度が上がるわけがない。結局、行き場のない方は加齢によって自然にADLが落ち、認知症が進行し介護度が上がるのを待つ。残念ながら、本来の目的であるリハビリして在宅復帰できる方は少数である。看取り件数も年々増えている。施設で看取り委員会があるくらいだ。国も施設の看取りを推しているしな。
『疾患の治療』の場である病院とは違い、老健の利用者は『疾患とともに生活している』ため、実習での看護展開の取っ掛かりを見つけれない学生は多い。「私、何をしたらいいですか?」とストレートに聞いてくる学生もいる。実習内容自体は楽だが、事前に実習の目的を明確化していないと不完全燃焼で終わる。

病院実習は問題の見極めが大切やろ?その問題(疾患)に対してのアプローチの方法が大事になって来るやろ?要するに問題解決思考や。しかし老健は問題ありきでその人の生活を考える。問題共存思考や。そもそも病院と違って病気も安定しているからな。対象者だけじゃなく、対象者を取り巻く環境など、いかに物事を広く見れるかが大事やな。実習期間も短いから真面目に一つ一つ問題を把握しようと考える学生ほどつまずく。

病気を持っていても安定しているから問題にならないって事か。それよか持病ありきでQOLを上げる為に何をしたらいいかを考えないとアカンのやな。確かに病院実習より俯瞰して見れないと難しいな。

そういう事。『人』としていかに考えられるか。そしてその人の世界に自分をどう組み込むか。それが出来ないと施設見学で終わる。まぁ、施設実習は息抜き実習でもあるから、展開できなくても俺は評価を落とす事はしないけどな。